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冬のヴェネツィア ④~A sort of homecoming in Venice - Part 4


暦の上では既に春を迎えているはずなのに、真冬並みの寒さが続いて体調を崩しがちな今日この頃…

さて、今回も『冬のヴェネツィア ③』に続いてやや(かなり?)マニアックなヴェネツィア案内になってしまいそうですが、その前に、数日前に飛び込んできた残念なニュースについて私なりの想いを少しばかり記しておきたいと思います(因みに昨日の残念なニュースは、民主党の新しい党名が『民進党』に決まったってことでしょうか…別に民主党の熱烈な支持者でもないので何でもいいっちゃあいいのですが、『立憲民主党』のちと古臭い感じが逆に今は新鮮かも~って思ってました。というか『民進党』って何だかテレビドラマとかで使われそうな、既存の党名に似せた実在しない党名っぽい感じがしてしっくりこないんですけど)。


ここ暫く、私にしては珍しく60年代末~70年代半ばの洋楽を雑多に聴いており(スリー・ドッグ・ナイトとかCCRとかイエスとかピンク・フロイドとか)、何年ぶりかでELPのLPなんかも引っ張り出してきてプログレってやっぱり凄かったな~なーんて改めて思っていたところになんと!キース・エマーソンELPの"E"ですね)が他界したとのニュースが…しかも、どうやら病気の影響で思うような演奏ができなくなってきたことを苦にした自殺だったようで、あんなにも大きなインパクトを世界中に与えたユニークな作品を生み出し、天才的な演奏で魅了したミュージシャンが、70歳を過ぎてなお過去の栄光に甘んじることなく現役ミュージシャンとしての苦悩を抱えつつ自ら人生に幕を引いたということに少なからずショックを受けました。

当時、一家に一枚と言われていた『展覧会の絵』(この時代の日本における『一家に一枚』洋楽アルバムは、この『展覧会の絵』か又はピンク・フロイドの『狂気』だったと伝え聞いていますが、私自身はリアルタイムで聴いていたわけではなく、たまたま学生時代にジャンルにこだわらず洋楽を聴きあさるうちにそれらを知って、結果的に両アルバムとも現在に至るまで持ち続けている次第です)はクラシック音楽をベースにした実験的且つ意欲的な演奏も画期的でしたが、展覧会の会場を描いたアルバムジャケットも斬新で、私の中ではイエスの代表作『こわれもの(一曲目のRoundabout、長い曲だけど起承転結があって今でも大好き♪です)』とともに「これぞプログレッシヴ(=前衛的な、進歩的な、革新的な…といった意味)!」という位置づけだったのです。

正直プログレにさほど深い関心のなかった私は彼らの他のアルバムは持っていないし、一時期カール・パーマー(カッコよかったですよねー!ドラマーとしてはもちろん、ルックスも)に代わって渡り鳥コージー・パウエルが加入したときは「これは何かのギャグなのか(コージーがELPだなんて意外すぎて、バンド名のELPを維持するためにわざわざイニシャルがPのドラマーを探したかのように思われたので)?」という気さえしたものですが、少なくとも『展覧会の絵』は、2016年のいま聴いてもゾクゾクするような高揚感とともにその世界に惹き込まれていく力強さを湛えたアルバムであることは確かです。といいつつ、彼らの楽曲の中でダントツのお気に入りはFanfare for the common manなんですけどね。

で、結局何が言いたかったかというと…仮に本当に病気を苦にした自殺だったとして、それを全面的に肯定するつもりは全くありませんが、とはいえ70歳を過ぎてなお持ち続けていた彼のミュージシャンとしてのプライドに敬意を表し、哀悼の意を捧げたいということです。彼の家族や友人は当然、演奏が思うようにできなくなったとしても生き続けてほしかったことでしょうけれど…今ごろ、あの世でコージー(数十年前に自らが運転する車で事故を起こして他界)とセッションでもしているでしょうか。


ここから、ヴェネツィアの続きです(やっと)。

私がヴェネツィアで暮らしたのは僅かふた月ほどではありましたが、平日はほぼ毎日、学校帰りに島内のあちこちをくまなく散策していたこともあって、ヴェネツィアを離れる頃にはぼんやりと暮らしている地元民を凌ぐほど地理的にはかなり詳しくなっていました。

にもかかわらず、その後里帰りするたびにまた新たな側面を発見してしまうので、いつまでたってもヴェネツィアを極めるには至らないのです。そしてそれこそが、私をヴェネツィアへと誘う最大の要因なのだと理解しています。


これは前々回の里帰りの際に散策していてたまたま辿り着いたスポットなのですが、おそらくどのガイドブックにも記載されていないでしょうね~。

かなり穴場すぎる上、私としては正直ちょっと秘密にしておきたいくらいなので詳しい場所については記述を控えますが(出し惜しみするほどの情報でもないんですけどね^^;)、中心からは少々離れたエリアで観光客の姿は皆無であることは確かです。


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何とも言えず、いい雰囲気ではありませんか?

今は廃墟となった、かつてのタバコ工場周辺一帯…真っ赤な外壁のメインビルディングや運河にかかる渡り廊下など、時計の針が止まったかのような静かすぎる佇まいに戸惑いながらも「ヴェネツィアにこんなところがあったなんて」と思わせる不思議な空気感が、この街を歩いて回る楽しみに説得力といったものを与えてくれるのです。

街外れということもあって人通りは極めて少なく、サン・マルコ広場の喧騒とは無縁の、まるで過去に取り残されたかのような静けさの中さらに街外れへと進んでいくと…


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そこには、もはやヴェネツィアではない、全く別の場所に来てしまったかのような風景が広がっていました。

言うならば、湿り気を含む冬の冷気に包まれたポー川流域の湿地帯のような…そんな、ちょっぴり幻想的な風景に見とれていたらうっかり足を滑らせそうになり、ふと足元を見ると、今度は船着き場の石段に生す苔(藻?)のグリーンのグラデーションの美しさに目を奪われてしまったのでした。水面に映る木々の枝模様といい、こんなにも自然が感じられる美しい場所、住んでいたときに気付かなかったことが今更ながら残念でなりません。

木々の向こうは私有地で、ちょっとしたお屋敷街のような一帯なのですが、残念ながら部外者は立ち入ることができず…どんなところなのか、見学できるものなら見学させていただきたいくらい。


この近辺はとにかく、年中観光客で賑わう界隈の風景とは異なる、もっとシンプルな風景が広がっていて、ヴェネツィアという街の多面性が感じられるエリアです。

この並木道なんて、ヴェネツィアどころかイタリアなのかどうかもはっきりしないくらいですよね~。


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ここからは、前回の投稿で紹介したカナレッジョとともに個人的に思い入れのあるセスティエーレ、ドルソドゥーロの風景を少し振り返ってみます。ドルソドゥーロは堅い背中、あるいは固い背骨といった意味合いで、このあたりの地盤がヴェネツィアの他のエリアよりも相対的に高く、安定していたことに由来するそうです。

かつての定宿だったホテルや大好きなサルーテやアカデミア美術館、通っていた学校があったサンタ・マルゲリータ広場や映画『旅情』でキャサリン・ヘップバーン演じる主人公ジェーンが運河に落ちた(!)現場であるサン・バルナバ広場などなど…個人的に思い出深く、大切な場所がひしめくセスティエーレなのです。


初めてヴェネツィアを訪れる人には是非、サン・マルコ広場周辺だけでなくドルソドゥーロも歩いてみるよう薦めるのですが、それというのもこの界隈は他のセスティエーレほど複雑に入り組んだところがなく、全般に視界が開けているせいか比較的迷わずに歩くことができるからで、なおかつヴェネツィアらしい見どころも多くて初心者に優しいエリアだと思うからです。しかも、アカデミア美術館前からプンタ・デッラ・ドガーナに向かう道には様々なジャンルのギャラリーや、若いアーティストが自分たちの作品を販売している個性的なショップも多く、そぞろ歩きが楽しい一帯なのです。

で、ここでの大きな見どころのひとつが、ゴンドラ造船所…というかゴンドラのメンテと修理がメインとなりつつあるこの場所です。


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僅かに残されたスクエーロと呼ばれるゴンドラ造船所の中でもこのサン・トロヴァーゾは特に風情があり、私も里帰りのたびにここに来てしまいます。


そしてスクエーロ前の運河沿いの対岸に、ヴェネツィアでもなかなか入手困難なホンモノのフラゴリーノのボトルを売っている老舗の酒屋兼バーカロがあるのですが(フラゴリーノがあるかどうかは時期というかタイミングにもよりますが、もしあったらまずはバーカロでビアンコ(=白)とロッソ(=赤)を飲み比べてみた上で、気に入った方のボトルを購入することをオススメします。定かではありませんが、確かビアンコの方が若干レアだったような…)、私はかつてチケッティと呼ばれる一口サイズのおつまみ目当てでちょくちょくここに行ってたんですよね~。今回も一度、冷たい雨が降る夜に小腹が空いて立ち寄ってみたところ、天気に関係なく店内満員で活気に満ち溢れていました!

それにしてもバーカロのようなお気軽な立ち飲み文化、イタリアでもこの街でしか発達していないのではないか、と…因みに、大抵のバーカロにはノンアルコール飲料もある(例えば食前酒風飲料とか)ので、雰囲気を楽しみたいけどお酒飲めないから入りづらい…などとビビることはありません。堂々とノンアルドリンクとチケッティでバーカロの雰囲気を楽しみましょう♪


ドルソドゥーロの街角の何気ない景色は四季折々美しく、今回も冬らしい風景が印象的でした。

島のはしっこに位置するヴェネツィア大学建築学部周辺には今回初めて足を延ばしてみましたが、当然のことながら日本の大学のイメージとはかけ離れていて、これがキャンパスだなんて何だか憧れてしまいます…


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とりわけ冬らしさが感じられたのは、サン・バルナバ広場の一角の運河沿いに係留しているボートで営業している八百屋さん(このボートの正面に実店舗もある、れっきとした八百屋さんなんですけどね)の、店頭に並ぶ野菜たちの顔ぶれでしょうか。


ヴェネト州トレヴィーゾが産地のラディッキオ・ディ・トレヴィーゾは、まさに今が旬の冬野菜!赤×白のおもしろい形状が特徴的ですが、味は何となくチコリっぽい感じでリゾットにするとおいしいんですよねー♪日本でも高級スーパーなどで見かけることがありますが、あえて日本で買おうとは思いません。

一方、私が未だ日本で見かけたことがないのがチーマ・ディ・ラーパ。これも今が旬な冬野菜で、直訳するとかぶの先端。一見菜の花っぽい菜花ですが、殆ど苦味がありません。コレ、かつて私の上司だったイタリア人女性の大好物で、ミラノ出張中に一緒に入ったトラットリアでチーマ・ディ・ラーパを使ったパスタのメニューを見て彼女が大興奮していたことを思い出してしまいました。そのとき彼女に教えてもらうまでこの野菜のことを知らなかったのですが、それもそのはず、市場に出回る期間が短めなんです。しかも当時はあまり高級なレストランでは使われることのない、どちらかというと家庭料理向けの食材だったので(近年、そのヘルシーさに着目する人が増えてメジャーになり、普通のレストランでも使われるようになってきたみたいです)、そのトラットリアでメニューに載っていたことは元上司にとってはビックリだったらしく…イタリア南部のプーリア州を代表するショートパスタ、オレキエッテ(耳たぶという意味で、形状がもろそんな感じなのです)と相性がいいみたいで、そのオレキエッテはそれこそ菜の花やブロッコリーなんかと和えてもイケますよー!

ロマネスコという品種の赤紫色のアーティチョーク(=チョウセンアザミ、イタリア語ではカルチョーフォ)もたっくさん店頭に並んでいましたが、これも旬なのでしょうか…ロマネスコだけにローマ周辺のラツィオ州が産地なのですが、独特の色味が渋くて美しいことから、野菜としてだけではなく植物として買い求めて花瓶に活けたりすることもあります。あ、そういえば今回の滞在中に一度、日替わりランチでアーティチョークのラザニアを食べたっけ。おいしかったな~、あれ。アーティチョーク、普通の緑色のもこのロマネスコも、どちらも大好きです。


…なんて食べ物の話なんか始めたらキリがないのでこれくらいにして、ドルソドゥーロ以外のエリアの冬の景色もちょっと振り返ってみましょう。


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これらは主にサン・ポーロと呼ばれる内陸部のセスティエーレの風景なのですが(一部おとなりのセスティエーレ、サンタ・クローチェの風景もあります)、リアルトの市場の辺りを含むサン・ポーロ一帯は昔ながらのヴェネツィアの佇まいが色濃く残っていて、歴史を感じさせるエリアです。特に市場付近には新旧バーカロが多々点在しているので、それらをハシゴしてワインを飲み比べるのも楽しいでしょう。

がしかし、狭い路地が続く迷宮のようなところもあって方向を失いやすく、初心者にはやや難しいかも…中・上級者向けのコースかもしれません。

かくいう私も実はあまり詳しくないんです、このエリア^^;


最後に、いくつかの印象的なソットポルテゴの風景で『冬のヴェネツィア』を締めくくることにします。

ソットポルテゴそれ自体だけでなく、光と影が織り成す光景を見たままに美しく撮るのは難しく、画像ではその魅力をなかなか伝えきれないので、これからヴェネツィアに行こうという人にはあちこち歩いて是非お気に入りのソットポルテゴを見つけ出していただきたいですねー。


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宿泊していたB&Bのフレンドリーなオーナーが別れ際にニッコリ笑って「で、次はいつ来るの?」と尋ねてきましたが、本当に、次回の里帰りはいつになるでしょうか…

今からもう、再訪が楽しみでなりません!


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Dearest G, all these articles about my stay in Venice are dedicated to you, as you may know.

It's a pity but there won't be any opportunities to go there with you although it would be so nice if we could stroll around town together, however, hope these photos would be tips for you when you decide to visit there...trust me, Venice is a town worth visiting.



by meewmeew | 2016-03-15 23:55 |

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