冬のヴェネツィア ③~A sort of homecoming in Venice - Part 3
『冬のヴェネツィア ①』は比較的メジャーな観光地でまとめましたが、今回はややマニアックなスポットを中心にアップしてみます。
その前に…ヴェネツィア滞在にあたって非常に重要な要素である宿泊について、少し触れておきましょうか。
自分自身が住んでいたときを除き、私のヴェネツィア滞在において毎回ほぼ定宿となっていたのはアカデミア美術館近くの美しい3つ星ホテルでした。
大昔、オーストリアから夜行列車で国境を越えて初めてヴェネツィアにやってきたバックパッカーの私が、サンタ・ルチア駅構内の観光案内所で自分の希望を伝えた上で紹介してもらったのがこのホテルで、シャワー共同かつ決して広いとはいえないシングルルームとはいえ今から思うと破格の安さ(一泊5000円程度)でここに宿泊できたことは本当にラッキー!でした。小ぶりながら、天井から吊られたヴェネツィアングラスのシャンデリアの輝きが今でも目に焼き付いています。
もとは貴族の邸宅で、大戦中はロシア大使館だったという歴史あるこの建物はアカデミア橋から徒歩5分、大運河からほんの少しばかり入った絶好のロケーションで、旅先での宿泊に関して予算とともにロケーションを重視する私にとっては申し分ないホテルだったのです。
春から秋にかけて、晴れた日の朝は運河に面するテラスで朝食をとり、とても気持ちよく一日のスタートを切ることができます。
運河側と中庭側、どちらにも素敵な部屋がありますが、いかんせん部屋数が多くないので早めの予約が必須なのです…が、今回は案の定、ヴェネツィア行きを決めたのが直前すぎて予約が取れず、ここに泊まることはできませんでした(なので当然、画像も以前のものです)。
で、定宿にかわって宿泊したのが、オンライン予約サイトでたまたま見つけた比較的新しいB&Bです。こちらも決め手は料金とロケーション、加えてそのオンライン予約サイトにおけるユーザーの高評価でした。
元は貴族の邸宅だった館をホテルとして運営しているトラディショナルな定宿とは対照的にこちらのB&Bはオーナーの趣味が反映されたモダンな内装で、暖色系のアースカラーでまとめられたシンプルな室内は居心地が良く、昨年オープンしたばかりなので清潔感もあり、更にはダブルルームのシングルユースということもあって広々とした空間で快適に過ごすことができました。
バスタブがないのが日本人的には唯一残念なポイントでしょうか…あとは、ミニバーがないってのは夏場はちょっとキビシイかも?アメニティは非常に充実しているとまではいえないものの必要最低限のものは揃っており、イタリアでは珍しく何と歯みがきセットがありましたね~。
3部屋のみのB&Bということで看板もなく、玄関はご覧の通りごく普通のアパートのよう…ドアの脇にあるボタンで暗証番号をプッシュして入るので、まるで住民であるかのような気分になります。
そして、部屋からの何気ない眺望が、ヴェネツィアにいる喜びを感じさせてくれます。
早朝、物資を運ぶボートが次から次に現れ、犬の散歩をする人の姿が見え…生活感と、そして活気溢れる風景が窓から見えるたび、自分が住んでいた頃のことが思い出されます。
そして、B&B周辺の雰囲気がまた、非常に素晴らしかったのでした…今回はインアウトともに空路ということで、空港からのアクセスを考慮してアリラグーナというエアポートシャトル(ヴァポレットの空港発着バージョン)の停留所に近いところという条件でホテルを探したのですが、ヴァポレットの停留所でもあるサン・タンジェロから徒歩3分のこのB&Bはその条件をクリアしていただけでなく、思いのほか静かで美しい住宅街にあったのです。
サン・マルコ広場からアカデミア橋に向かう途中に位置するこの近辺の土地勘はあったものの、B&B周辺がこんなにも魅力的だとは知らずに予約したので、現地に着いてからここに宿泊できて本当に良かったと改めて思いました…総合的にみてこのロケーションはスバラシイのですが、特に、ヴェネツィアにしては比較的商品の充実したスーパーが徒歩圏内にあるってのが個人的に◎でした!
今回私は空路でしたが、陸路でのインアウトの場合はサンタ・ルチア駅に近いエリアに宿泊するか、あるいはやはりヴァポレットの停留所から近いところに予約するのが無難でしょう。荷物が少なくて軽い場合、ある意味島内どこに宿泊しても構わないと言っても過言ではないのですが、スーツケースを持って行く場合はそれが大きくても小さくても、なるべく橋や階段など段差があるところを通らずに辿り着けるホテルがいいと思います。
参考までに…駅や空港からホテルにアクセスする方法としては、徒歩・ヴァポレット・アリラグーナ以外に水上タクシー(要はタクシーで、クルマでなくボートなだけです)という手もあります。例えば、人数が多くて、宿泊先が運河に面している場合などは、水上タクシーで直接乗りつけるというのが手っ取り早くていいと思いますが、タクシーは当然料金もそれなりにするのでご予算次第でしょうか。私は以前一度だけ、帰国時のフライトの時間が早朝すぎてアリラグーナが運行していなかったため、定宿から直接水上タクシーで空港に向かうというすごーい贅沢をしたことがあります…やむをえず利用したとはいえ、それはそれはラクジュアリーな気分になりますよ~。
少々わかりにくいかもしれませんが、㊤の画像がアリラグーナ、㊥の画像で中央を走行しているのがヴァポレット、手前左側に見えるのが水上タクシーです。㊦の画像のゴンドラは、ホテルへのアクセスには利用できません^^;
運河を走行するのは何も公共交通機関やゴンドラだけではなく、むしろ個人が所有するボートや荷物を運搬するボートなどの方が多いでしょう。ザッテレでは驚くほどゴージャスな豪華客船に出会うこともしばしばありますし、大運河では警察や消防、救急のボートも頻繁に走行していますし、至るところで年に何度か開催されるレガッタに向けてカヌーの練習に励む人々もよく見かけます(いいな~。私がヴェネツィアで生まれたなら、きっとカヌーに夢中になっていただろうと思うのです)…これがヴェネツィアの日常の風景なのです。
この↑4人組のカヌーチームが漕いでいるところはかつて私がホームステイしていた家の程近く、賑やかなサン・マルコ広場からはかなり離れた、どちらかというと駅寄りの地味なエリアなのですが、滞在中唯一日晴れていたこの日は潟の向こうにうっすら雪化粧したドロミテ山脈が見えて、とーっても清々しい気持ちになれました。そういえば、空路パリからヴェネツィアへ向かうときも、冠雪したアルプス山脈の美しい景色に見とれていたんだった…
要は島の端っこに位置するこの場所からは、飛行機や列車も眺めることができるんです。
ヴェネツィアはセスティエーレと呼ばれる6つの地区で構成されているのですが、かつて住んでいたこともあって個人的に最も思い入れの深いこのエリアはカナレッジョというセスティエーレに属しています。
サンタ・ルチア駅からサン・マルコ広場方面へと向かう賑やかなメイン・ストリートで、ヴェネツィアの動脈とも言われるストラーダ・ノーヴァがこの地区を貫いているものの、表通りから一歩裏へと入ると小径と運河が織り成す静かな風景が美しく、いろいろな発見があって散策が楽しいエリアなのです。
…ということでこの地区には私のお気に入りスポットが山ほどあるのですが、ここではヴェネツィア特有の建築様式であるソットポルテゴ(『ドイツ旅行記 ⑫』参照)の中でも最も美しいと思われるソットポルテゴを紹介したいと思います。
廃墟と化したかつての修道院の脇、運河に沿って趣のあるソットポルテゴがあります。
修道院は永く閉ざされたままですが、ソットポルテゴは今でも周辺の住民を中心に通行する人々が絶えません。時間帯によっては柱と柱の間に美しい影が見え隠れし、僅か数メートルの距離ながら歩くのが楽しいトンネルです。
この近くにはヴェネツィア本島にただひとつだけ残された、特徴的な橋もあります。
わかりますか?欄干がないんですよー!
なんでもこれがヴェネツィアの橋の原形なのだそうです。私はどうしてだかこの橋が好きで、里帰りのたびにここに来ているような気がします(^^)
現在では本島で欄干のない橋はこれ↑のみ…但し、トルチェッロ島にも同様の欄干のない橋がひとつあって↓ズバリ『悪魔橋』という名前がつけられています。
カナレッジョにはもっと素敵な風景がいろいろあるのですが、どちらかというと春から夏にかけて訪れたときの方が楽しめるかもしれません。
また、この地区には一見さん…というか地元民以外にはわかりにくい感じで個性的なバーカロ(ヴェネツィア特有の、立ち飲みが基本の居酒屋のようなバー)が点在しており、ワイン好きの人にとっては探索しがいのあるエリアかもしれません。かつてバーカロだったのがジャズクラブへと変わった失楽園という名の店にはアルコールNGの私も、カジュアルなヴェネツィア料理とライブ目当てでちょくちょく通ったものでした。
最後に、カナレッジョを代表する建築で、最もヴェネツィアらしいファサードを持つといっても過言でないカ・ドーロで締めくくりたいと思います。もはやその外観は全くもってオーロ(金)ではありませんが、現在に引き継がれた優美さは大運河沿いの他の邸宅に比して群を抜いており、ヴェネツィアを象徴する建築であることは間違いありません。
…今回もコメント控えめでひたすら画像をアップしていったつもりだったのに、結局全部は紹介しきれませんでした^^;
しつこいけどもうちょっとだけヴェネツィアに留まって、今月のうちにはなんとかアイルランドに移りたいと思っております(が、はたしてどうなるか…)。